top of page
スクリーンショット 2023-01-26 0.25.51.png
​MONOSASHI file06
.JPG

MONOSASHI file16

Gosuke Uno’s
MONOSASHI

​深さ

MONOSASHI file16は、宇野豪佑さん。東京で10年間住んだ後、4年前から北海道の洞爺湖に移住した豪佑さん。洞爺湖では、自然に囲まれながら「繋がり」を見つけるBlue Villageという村づくりに取り組んでいます。今回は、宇野豪佑さんだけのMONOSASHIについて教えてもらいました。

Q. 読者の皆様に自己紹介をお願いします!

 

宇野豪佑といいます。現在35歳で、今は北海道の洞爺湖に住んでいます。アメリカで生まれて、日本で育ちました。高校時代に1年間海外に留学し、日本の大学に進学して、その後10年間を東京で過ごしました。東京に住んでいる間に、国内外をたくさん旅したのですが、いくつかの偶然が重なって洞爺湖に出会い、約4年前に洞爺湖に完全に移住しました。

 

Q. MONOSASHIの取材では、ゲストにお気に入りの洋服を着てきてもらうプチコーナーを実施していますが、今日はなぜこの衣装を選んだのですか?

.JPG

去年の夏に訪れたペルーで手に入れたポンチョを着ました。ペルーのクスコという都市から車で約5時間かかるとても標高の高い山に、ケロ族という部族の方々と一緒に行ってきました。ケロ族の人々は、自然や宇宙と繋がる暮らしを当たり前のように感じて、今でも自給自足の生活をしています。このポンチョは、アルパカをたくさん飼育して、その毛を利用して一人の女性が約半年かけて手編みで作っているもの。山を歩いていても、手で糸を紡いで編んでいるんです。この模様にはそれぞれ彼女らのお祈りが込められていて、特に湖への祈りを表す模様に惹かれて購入しました。ペルーではずっと着ていたんだけど、冬になるととても温かいのでこっちでも着ています。

 

Q.この服にはケロ族の方々の祈りが込められているんですね。豪佑さん自身が大切にしたい考えとも何か繋がるものがあるのでしょうか?

 

彼らは、自然や宇宙と繋がるということを当たり前にしています。それは、常に厳しい自然の中で生活しているからこそ。だから、自然に対して深い感謝の気持ちを持ち、絶えず祈りを捧げている。半年かけて手で服を編むこととか、彼らが祈っている姿や行動に共感はできる。だけど、実際に自分がそこまで成し遂げられるか、その深さを理解しているかといったら、正直測り知れない。その測り知れない部分への尊敬の念がすごくある。彼らの根底にある、自然に対する感謝と祈りの気持ちを感じたので、それを大切にしていきたいなと思っています。

 

自分が本当に心地よく過ごせる場所はどこなんだろう

.JPG

Q. ここまでの話を聞いていて、豪佑さんの中で「自然」がキーワードだと感じました。幼少期から自然と近い生活をしていたのですか?

 

もともと育った場所はあまり都会ではなかったので、自然は身近にありました。だけど、特に意識的に自然に惹かれていたわけではなくて、むしろ東京出身の妻の方が自然への憧れが強かったんです。洞爺湖にも、彼女に引っ張られるような形で約7年前に初めて訪れました。

 

Q. パートナーの方の影響が大きかったのですね。洞爺湖を訪れた経緯を詳しく教えてください。

 

当時は、東日本大震災や原発の事故などの大きな災害やその後の社会的な不安定さが続く時期で、そのことが私と妻にとっては違和感や痛みとしてずっと残っていて。その中で、都心での生活に対する難しさを感じるようになりました。この頃から、移住先を探し始めました。「自分が本当に心地よく過ごせる場所はどこなんだろう」と考えていた時に、たまたま洞爺湖という場所に出会ったんです。

 

何もない場所だけど、地下から水が湧いていた。

なんだかそこにすごく惹かれたんです。

.JPG

Q. 移住先を探していた時に出会ったのが洞爺湖という場所だったんですね。そこから移住を決めるまでどんな変化がありましたか?

 

初めて訪れた時にすごく気に入って、「空き家があったら買おうかな」と考えていたんです。そう考えている時期に、沖縄島北部のヤンバルの山の中で行われる合宿に参加しました。そこで、パーマカルチャーと呼ばれる、自然との繋がりを生活の中に取り入れて暮らす考え方に出会ったんです。その合宿では、自然との繋がりだけでなく、そこに集う人との深い繋がりも感じられて、自分にとってはすごく大きな経験になりました。それから、「自分も自然の中で暮らしたいな」とか、「自然と繋がる場所を作りたいな」と強く思うようになったかな。

 

Q. パーマカルチャー。初めて聞きました。沖縄でのパーマカルチャーとの出会いは、豪佑さんの移住計画にどんな影響を与えましたか?

 

合宿が終わった翌週、洞爺湖に向かいました。見つけていた空き家を買うつもりだったんです。だけど、実際に内見してみると、かなり劣化が進んでいるのを見て、沖縄の人たちがゼロからその場所を作りあげる姿を思い出しました。彼らみたいに、自分たちもゼロから作る方がいいのではないかなと思って、空き家ではなく「空き地」を探すことにしました。

選んだ空き地は、何もない場所だけど、地下から水が湧いていた。なんだかそこにすごく惹かれたんです。水は人間が生きる上ですごく大事だから、繋がりのデザインという観点からも、その土地に決めました。

 

Q. 決め手は湧き水だったのですね。その空き地に出会ってからすぐ移住したのでしょうか?

 

実は最初は、ここに秘密基地のような、楽園のような場所を遊びで作ってみようと、自分たちで小屋を作り始めました。仲間たちと、小屋作りを進めるうちに、洞爺湖での暮らしがますます好きになって、その土地を購入することにしました。それから、当時の仕事も全部やめて、完全に移住することになりました。

 

Q. 自然との繋がりを生活の中に取り入れて暮らすとはどういうことなのですか?

 

自然の中にいると、自分が自然体でいられて、自分らしくあれる感じがします。英語の”nature”には、自然という意味だけでなく、「性質」という意味もあるみたいに、自分が洞爺湖のような自然豊かなところにいる意味があるのだろうなと思います。それに、自分だけでなく、一緒にいる人たちも同じように自分らしくあれることがすごくいいな。みんながみんならしくあれる、自然な状態でいられるということは、やっぱり自然の中だからこそ生まれやすいのかもしれない。

.JPG

自分の中から湧いてくる声を大切にする

 

Q.自然の中にいると自分らしくあれるとのことでしたが、豪佑さんの中で「自分らしくある」とはどういうことですか?

 

リラックスしている時に自分らしいと感じます。「自分らしくある」とは、リラックスした状態のときに自然としていること。都会で暮らしていた時は、自分が不自然だったということに気づいていませんでした。例えば、洞爺湖では水が湧いていて、その水は絶えず流れ続けているんです。東京のような都会では、水が流れ続けることはもったいないから蛇口を閉めるでしょう。水は飲むことが当たり前で、不自然だと思わない。でも、洞爺湖に来て、水が絶えず流れ出ていて飲める環境に身を置くと、自分の「自然」に関する感覚の変化がありました。他にも、都会では朝早く出た太陽が眩しくて、自然と目が覚めることも少なかったです。都会での暮らしにおける不自然さには無自覚だったけれど、今振り返ってみると結構あったと思います。

 

Q. 確かに、水が絶えず流れ出ていて飲める環境に身を置くことはなかなかできませんよね。都会の中で感じる不自然さって他にはどんなものがありますか?

 

都会では、「何者かにならないといけない」というエネルギー感が強くて、それが不自然だったと思います。モノサシ的な話で言うと、常に比較される世界で、競争も激しくて、「自分が自分のままでいるだけではダメ」という不自然さがあると思います。だけど、僕が自然の中で植物を見て思うことは、さくらんぼの木はリンゴになろうとはしていないということ。このような不自然さは、洞爺湖に来てから無くなったかなと思います。「自分は自分だよな」と、すんなり受け入れられるようになりました。

 

Q.豪佑さんが東京にいた時はどのような暮らしをしていたんですか?

 

学習塾の経営をしていました。ただ、自分は経営者として、現場の仕事は別の人に任せるようになったので、次第に教室に行く回数も減っていきました。そこで、空いた時間を使って洞爺湖に行って、小屋を作ったり自分探しをするようになって。だけど、二足のわらじでやりたくはないと思い、塾の経営は別の人に任せて、洞爺湖に行くことを決めました。

.JPG

Q. 現在の洞爺湖での暮らしを詳しく聞かせてください!

 

洞爺湖では、小屋を作った敷地が広く、そこで自然と繋がるようなイベントを開催しています。それから、元々は塾で人の話を聞いたりとか、人生相談に乗ることをしていた経験から、その延長線で「ヒプノセラピー」もやっています。ヒプノセラピーは、人が普段と少し異なるノウハウの意識状態になるように誘導して、その人が心の奥底で感じていることを一緒に見ていくものです。そのヒプノセラピーの、セッションやオンラインワークショップをやっています。

 

Q. ヒプノセラピー。初めて聞きました!今の話を聴いていると、東京での暮らしも北海道での暮らしも繋がっているような気がします!

 

確かに、自分の人生が繋がっているなと思います。塾の中でも人の成長や意識の変容に関わったつもりですが、学習塾というフォーマットの中では限界を感じたんです。でも、自分が作っている場所であるBlue Villageに人が集まってくると、それだけで自分が望んでいた人の変容が起こるんだって気づきました。さらに、それをサポートするセッションをしたいと思ったときに、ヒプノセラピーにも出会いました。自分の人生が全て繋がっていて、無駄にならなかった。

「たくさん」よりも「深さ」を大切にしたい

.png

Q. 豪佑さんだけのモノサシを教えてください。

 

人との時間や関係性は、「たくさん」よりも「深い」ものがいい。

そんな深い時間や関係性でいろいろな人たちと繋がっていけたらいいなって思います。だから、もう一つモノサシに付け足すとしたら「繋がり」という言葉がいいです。東京にいるときは、自分の心と繋がることもあまりできていませんでした。心の中でいろいろ叫んでいるけど、無視したり、あまり聞いていなかったり。北海道に来てからは、自分の心の叫びを聞く時間が確保できるようになって、心の深いところと繋がるようになりました。自分が心の深いところにいられるようになると、周りの人の深いところとも繋がれるようになりました。いろいろなものと繋がる中で、その深さを体験している感じがします。

Q. その「深さ」も自然がキーワードなのでしょうか。

 

そうですね。自然の中で自然な状態に戻っていくことは、本当は多くの人が望んでることかもしれない。そういう感覚って誰にでもあると思うし、実際に自然の中に入ってみると、思っていた以上の安心感や喜びを感じられます。何もないように思えるけど、何もないからこそ人との繋がり、自然との繋がりを深く感じられ、創造性も発見できる。近くの公園でも良いし、ちょっと遠出がしたいなと思ったらぜひ洞爺湖まで遊びに来てください。

.JPG

MONOSASHI編集長・HI合同会社インターン / 松井瞳

interviewer : Hitomi Matsui , Mashiro Takayanagi

editor : Hitomi Matsui , Ryoma Iizuka , Mashiro Takayanagi

photographer  : Ryo Tauchi

creative designer : Sawako Hiramatsu , Mashiro Takayanagi

character designer : Rei Kanechiku

 

location  :  Blue Village

bottom of page